皆様ご機嫌いかがでしょうか。TaWは年度末ゆえか本業でとんでもないデスマ状態が頻発し、締め切りと寝不足とストレス性の頭痛と戦う毎日です。
 さて、アクティブなBMSフォロワーの方々はご存知かと思いますが、先日(2022/03/07~2022/03/27)Micelle氏主催の非評価型BMSイベント「BMSをたくさん作るぜ'22(以下『Bた作'22』)」が開催されました。tanacoro氏&Re:gats&氏の開催していたイベント「BMSをいっぱい作る」シリーズの後継イベントとして一昨年末より(今回含め)2回行われてきたイベントですが、「得点や順位付けといった評価を行わない(=実績や他者の戦略を気にせず気軽にBMSを出せる)」、「パッケージやレビューサイトではなくBMSイベントという形式(=昨今のトレンドの関係上反応が得られやすい)」という作り手にもプレイヤーにも優しい特色があります。それ故、「いっぱい作る」時代からBMS制作初心者の処女作公開の場となったり、評価型イベントでは確実に人を選ぶであろう尖った作品が登録されたりと他のBMSイベントとは違う独自の立ち位置を築いてきたわけですが、今回も例にもれず商業方面に進出した大物作家から今イベントで作家デビューした方の作品までさまざまな作品が公開され、非常に「濃い」イベントとなったと思います。
 いつもは無名戦後に作者さんへの応援も兼ねて個人的に気に入った作品の紹介記事を、自身の作品の裏話や言い訳とともに公開している、いわば基本的に「制作者」と「コンテンツ消費者」両方、どちらかと言えば「制作者」側の視点中心でイベントの私感を書き連ねている当ブログですが、今回は趣向を変えて完全に「消費者」としての観点オンリーで個人的な推し作品への好きを語っていこうと思います。つまりただの音ゲーオタクモードで好き勝手突っ走るだけの記事です。読んでいて気分を害した方がいらっしゃれば即ブラウザバックをお勧めいたしますBMS作家としても参加してますけど今回は裏話書くほどのネタもないのでそれもあったり

 それでは、早速いってみましょう!


No. 02 廃液 / 廃工場
 イベント開幕直後、主催のMicelleさんの作品が投下されるとほぼ同時に投下された謎多き作品。中身が想像できない作品名、明らかに偽名チックなアーティスト名義、謎のジャンル名「Garbage」、作者コメントには一言「ドラゴン」とあまりに異質で得体のしれない作品でイベント開始から1分も経たず会場を困惑の渦に巻き込みました。
 しかし、会場の情報を見てイロモノと侮ることなかれ、蓋を開けてみればまさしく廃工場のようなどこか退廃的で荒々しさのあるインダストリアルなビートと本家のSLAKE氏の作品を彷彿とさせる知的な印象のフレーズが組み合わさった、非常にクオリティの高く独自性も強いテクノが待っています。ネタを一切抜きにしてタイトルテーマをここまで表現できる表現力はまさに脱帽もの。因みに会場の試聴のsoundcloudリンクから謎めいた作者の正体には容易に迫ることができるので、そうして聴いてみると納得の構成かもしれません。
 ジャンルの方向性ゆえ、譜面も何を叩いているのかわかりやすく、配置もゲーム性が高いため、音楽とゲーム面両方で美味しい作品です。

No. 03 Agilion / LeaF
 BOFU2016優勝者であり、AC・アプリ問わず多数の音ゲーへの楽曲提供実績もあるLeaFさんがまさかの参戦。事前に新作を出すことを匂わせてはいましたが、G2R2018の『MARENOL』以来*の完全オリジナルBMSでの参戦に多くの人が歓喜しました。
 今回の作品は氏の作品によく見られるクラシカルとグリッチやブレイクコアを融合させた方向性ではなく、細かな音が目まぐるしく展開する楽器構成はシンプルながらも力強いハードコアテクノ。ある意味氏の代表的な作品たちとは真逆の方向性の作品ですが、細かな部分に氏の色は間違いなく出ており、氏の作風の幅広さを証明しています。
 そしてなんと今回はBGAを自作されたとのこと。楽曲と同様シンプルながらも細かな点まで作りこまれているBGAにも注目です。

No. 05 こまったぬの唄 / にょろも
 昨年のMA_2021 Class Cで見事優勝し、界隈にEarthpower旋風を吹かせたにょろもさん。前回のBた作では幻想的な和風トランスで参戦し新たな一面を明らかにしましたが、今回はまさかの童謡で参戦。BMSで(GENRE-SHUFFLEのような特殊なイベントは除くとしても)「童謡」というジャンルを聞くことになるとは…。
 ゆったりとして優しくまさに童謡、といった感じの曲調とは裏腹に、歌詞は現代社会の孤独感を歌っており、シリアスな笑いを誘います。そして最後には…?

No. 08 重機動メカ ビッグ・マック / ronald
 嬉しくなると、ついやっちゃうんだ☆
15年前、あのネタにハマっていた人たちに心からお勧めしたい作品です。

No. 10 7th Photon Burst / 原木シィタケ
 今年のMA_2022のCalss C部門で参戦表明している原木シィタケさんが無名戦に先駆けBた作に参戦。分厚いリードに濃いベース、細かく効いたエフェクトにスピーディーな展開とまさに現代を生きる音ゲーHARDCORE、という作品で、ACの音ゲーのいずれかに入っていてもおかしくないほどのクオリティです。
 現時点で楽曲・譜面・ビジュアル面すべてにおいて非常に高い技術を有していることを示した原木シィタケさん。MAにてどのような活躍を見せるのか、注目です。

No. 17 Bang Cake / くるやのぶ
 BMS界に一定周期で現れる「ガバキック使い」の1人であるくるやのぶさんですが、今回はそのメインウェポンであるディストーションキックを封印。いつもとは違ったアプローチでその持ち味である力強い作風を披露しました。こちらも低音と分厚いリードが生きた現代的な作風で、昨今のトレンドに乗っている作品の1つと言えるでしょう。個人的にはバックで鳴っている細かな電子音が曲のスピード感を出す上で良い仕事をしていると思います。
 因みにMA_2021に引き続き、今回もBGAはお手製だとか。前回よりもさらに表現手法が進化したBGAは必見です。
 因みに余談ですが、このBMSをやると無性にパンケーキが食べたくなります。何故でしょう…?

No. 25 Towards the Epipelagic / hugepulse
 テクノ好きなので取り上げた枠その2。近年は活動頻度を下げつつも、コンスタントに独自性の高いBMSを発表し続けているもだまことhugepulseさんが今回もBた作に参加しました。テクノやエレクトロニカを得意とする氏ですが、今回はその方向性が生きている海をテーマにした2曲が印象的でした。以前当ブログでも触れた某海中探索ゲームに氏が一時期ハマっており、それと今回の作品の方向性が関係しているのではないかと個人的には睨んでいるのですが果たして真相は…?
 氏が今回公開した3曲のうち、個人的には特にこの作品をピックアップして取り上げたいと思います。やさしく透明感のある曲調が海の表層部というテーマと合っており、それでいて同時に海の底知れなさのようなものもしっかり出ているため氏の表現力に驚かされます。
 因みに譜面が低難易度から最高難易度までほぼ等間隔で並んでいるのも特徴。

No. 27 似顔絵広場 / 戸高一生 / BMS:crossworld
 ちょっと変わり種枠だとこれ。このイベントの門戸の広さを象徴する作品です。
 オリジナルではなく、昨年のBOFXVIIにて私のチームに参戦してくださったcrossworldさんが耳コピとBMS化を行った、いわゆるコピーBMSの一種なのですが、譜面にギミックが仕込まれており、確実に初見プレイ時は強烈なインパクトを受けること間違いなし。
 原曲が忠実に再現されており、コピーBMSとしてもクオリティが高いです。

No. 28 Consistense / GONTA
 テクノが好きなので取り上げた枠その3。古き良き雰囲気のシンプル・イズ・ベストなミニマルテクノです。譜面の配置もどこか初期の本家寄り。
 驚きなのはGONTAさんはこれが初BMSとのこと。さらに氏はMA_2022への出場も表明しており、無名戦での活躍が期待されます。

No. 33 杪冬の願い / あとぅす feat. 橘花音
 Mutual Faith 3以降Digital J-Popを主軸に作品を発表しているあとぅすさんですが、今回はなんとヴォーカル曲2曲+インスト曲3曲(うち合作2曲)という今イベント中2位、基本的な難易度がそろっている作品を発表した数としては最多の作品を発表するという快挙を成し遂げました。どうやってそんなにたくさん作ったんだろう…。
 どれも高クオリティなうえ譜面もやりごたえがあって良いのですが、個人的にはその中でもこの曲を推したいです。Digital J-Pop特有の哀愁成分と冬の終わりというテーマは相性がいい!王道ながらも決して陳腐になっていない展開、キレのあるリード、流れるようなピアノと何よりサビでの転調とそろうべきものがそろっています。
 後述の作品と言い、今回のBた作はヴォーカル曲が充実していた印象です。
 
No. 43 COSMIC INVITATION(BMS edit) / hard
 昨年のMA_2021にてビジュアル面と楽曲面両方の強さを示したhardさんによる久しぶりのBMS。タイトルの通り広大な宇宙をの光景が脳内に広がるかのような力強く、そして幻想的なトランスです。

No. 46 とむらヰ / Sakamiya feat. 葵一花
 昨年の秋M3にて頒布されたSakamiyaさんのアルバム『Re : xtinction』より。同アルバムからはBOFXVIIで『Heathenism dogma』がBMS化されています。「ダークさ」をテーマとしたアルバムの最後の1曲ということで雨が降るかの如くアシッドサウンドが鳴り響き、陰鬱な感じがよく出ている曲なのですが、サビで一気に曲調が変わり、王道Digital J-Popとしての一面ものぞかせます。
 因みに譜面ではアシッドベース部分が縦連打になっています。縦連打好きの方は是非。

No. 59 Parade Goes On / Elkei
 前回から引き続きの参加となるElkeiさんですが、今回はどことなくダークだった前作とは真反対な作品です。「Happy」のジャンル名通りメジャー進行かつ声ネタを多用した底抜けに明るい曲調で、プレイしていて楽しい気分になりました。
 簡易的ですがBGAもついており、こちらも楽しげな内容になっているので必見。

No. 76 Dance with me / SOMON
 2017年のデビュー以降コンスタントにBMSを発表し続けているSOMONさんですが、今回も例にもれず新作を発表。今回は氏の得意とするジャンルの1つであるHOUSEにレトロフューチャーなテイストを加えた作風で、ノリが良いダンサブルな1曲となっています。
 曲に合わせて小さなロボットが躍るBGAも必見です。

No. 78 次ギ剥ギ / Penu a.k.a. Micelle
 開幕から立て続けに3作品を公開し、主催として自ら「BMSをたくさん作るぜ!」とばかりにその高いポテンシャルを遺憾なく発揮したMicelleさんですが、なんと偽名で追加1作公開していたことが期間終了後明らかになりました。
 一目見ただけで「これはヤバそう」とわかるタイトル、donotshowなる異質さしか感じないジャンル名、コメントには一言
縫われた痕が疼く 彼らがみている
と全体から危険な香りを放っていた作品ですが、似た形で注目を浴びていた『廃液』とは対照的に、こちらは中身もまさしく「危険」で「異質」な作品でした(もちろん良い意味で。作品そのものにセンシティブ要素は含まれていないため、皮肉なことに元が氏が過去に作っていたゲームのBGMである『Forbidden(BMS Edit)』を除いた今回の氏のBMSで唯一nsfwカテゴリに入っていなかったりします)。ポリリズムの暴力と言わんばかりに目まぐるしく変化するリズム、現代美術的な構成と、図ってか図らずか今回のイベントの裏ボス的な存在になっているように感じます。


 当初は本記事をインプレ期間終了前に投下し、
インプレ終了まで残りわずかとなりましたが、未インプレの方もまず色々プレイしてみて自分のお気に入りの作品を見つけてみてはいかがでしょうか。そして少しでも気に入った作品があったらインプレしましょう。「この曲好きです!」の一言でも作者は喜びます。
…みたいなことを書いていい感じに終わらせようと思っていたのですが、OtogeShowcaseMarathonを見ていた影響でインプレが結局デスマ状態になってしまったので自ずと本記事の執筆も遅れに遅れ、公開は見てのとおりインプレ期間終了後になってしまいました。すみません…。
 ただ、期間は終わっても作品に触れることは可能です。本記事で紹介したのはあくまで私が個人的に気に入ったもののため、本記事で紹介したもの以外にも良い作品は多数あります。79作品、ジャンルも難易度も様々ですが、非評価型ゆえに集まった個性派作品が多数あるので未プレイの方はまず最新版のパッケージをダウンロードしてまず気になったところからやってみてはいかがでしょうか。
 そして出来たら私の作品もプレイしていただけると幸いです(隙あらばダイマ)。

 さて、次イベントは4月末のはるかぜ音楽祭ですね。カービィ好きの方はぜひ参加しましょう。こちらも非評価型になるそうなので、「得点を付けられるのが怖い…」という方も安心して参加できます。
 
 ただ、今年はこの後もイベントが多数控えているため、参戦は計画的に。












*オリジナルに限らなければ、氏はその間東方音弾遊戯9で『Armageddon』、Twitter上で『眠りの花束(※作曲は削除氏とtarolabo氏)』を発表されています。